鳥取大学工学部 鳥取大学大学院工学研究科 Faculty of Engineering, Tottori University / Graduate School of Engineering, Tottori University

機械宇宙工学専攻 教授 藤村薫

機械物理系学科
機械宇宙工学専攻 教授

KAORU FUJIMURA

藤村 薫

1952年、京都市生まれ。

理学博士。78年、京都大学大学院工学研究科修士課程修了(機械系工学専攻)。日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)を経て97年、鳥取大学に赴任。この間アメリカカリフォルニア大学ロサンジェルス校(UCLA)客員研究員。

原研時代から今日に至るまで一貫して流体力学、特に流れの安定性に関連した研究に取り組む。13年より大学教育支援機構教育センター長を併任。

「流体」から学べることは、多分野の基礎科学研究に通じている。

大抵は「乱れた流れ」が私たちを包んでいる。

私たちは、多くの「流体」に包まれている。たとえば水とか空気も流体そのものである。川の水は流れ空気も流れているが、そうした流体の流れを中心に「非線形現象」を研究しているのが藤村薫教授。非線形というのは、一般には1次(直線的)でないことを指すが、ある物理現象が非線形であるとき、多くの場合、それは多様性に富み解析は極めて困難である。そのため、非線形科学は現在の基礎科学研究の大きな柱のひとつである。

「流体の流れは非常に規則的な“層流”と、それから“乱流”といって不規則に乱れた状態に分類されます。いま、この研究室にはエアコンから風が吹いていますが、この風はおおむね乱流です。私たちの身の回りにある流体は、大半が乱流だと考えてもらっても結構だと思います」と教授は言う。

“層流”は限られた条件のもとで認められるものの、条件の変化、例えば速度や圧力の変化、また、温度や濃度、重力などの影響によって“層流”は規則性を失い、やがて“乱流”となる。この過程を「遷移過程」と呼ぶのだが、その過程に焦点を当て、数理的に遷移のメカニズムを解明しようというのが研究のメインテーマの一つになっている。

流体力学における層流から乱流への遷移過程の理解は、航空機の空気抵抗を予測するうえで不可欠であるが、無重力、もしくは微小重力下で大きな結晶を精製するうえでも極めて重要である。そのため、ISS(国際宇宙ステーション)での日本の実験棟「きぼう」では、無重力下での流体力学(特にマランゴニ対流)の実験が組み入れられており、現在データ収集と解析が行われているが、教授たちの研究グループは、その理論的なサポートにも携わっている。

身の周りにある現象の不思議に興味をもってほしい。

20年近く日本原子力研究所に在籍。「そこでは本当に自由に研究をさせていただきました」という教授が、その研究途次に“流れの安定性”という分野に触れたのが今の研究につながっている。「原子力とこの流体の学問は、何のかかわりもないように見えるでしょ?」。そうではなかった。高速増殖炉「もんじゅ(福井県)」での冷却用のナトリウム漏れ事故(1995年)や、さらには東日本大震災で発生した福島第一原子力発電所の一連の事故が、渦や波によって引き起こされたことは周知の事実である。

流体の研究は「即物的に日常社会に反映される応用のためだけの研究ではないんです。工学は“モノづくり”が主眼になりがちですが、どんなにハイテク志向でも根本がズレていると、お話にならない。まずは身の周りにある現象の不思議に興味をもつことが基本です」。そこから機械工学、土木工学をはじめとする、さまざまな工学やその他の学問に通じる基礎中の基礎を学ぶ土台をつくろうと教授は考えている。

※平成24年度鳥取大学案内に『スーパーティーチャー』として掲載