鳥取大学工学部 鳥取大学大学院工学研究科/工学専攻 Faculty and Graduate School / Department of Engineering Tottori University

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社会システム土木系学科 教授 福山敬

福山 敬

社会システム土木系学科 教授

KEI FUKUYAMA

福山 敬

1967年鳥取市生まれ。

鳥取大学工学部卒業(社会開発システム工学科・第一期生)、カナダ・ウォータールー大学博士課程修了・Ph.D.(システムデザイン工学)。東北大学准教授(情報科学研究科)などを経て、07年より現職。

鳥取をはじめ多くのまちづくりや都市計画にたずさわる。主な研究テーマは「社会システム工学」「応用ゲーム理論」。テニスや卓球のほか、自転車でまちへぶらりと出かけポタリングを楽しむ。

留学時代にGovernment of Canada Awardを受賞.また,経済一般均衡モデルに地域政府の戦略的意思決定を加えた交通施設整備に関する一連のユニークな研究が評価され,07年日本交通学会賞を受賞.

まちや都市のあり方を、社会システム工学の視点から照らし出す。

「社会の基盤」とは土木構造物だけではありません。

我々が暮らす「まち」には人が歩き、自動車やバスが走る道路や橋が造られ、鉄道が走ったり、電気や上下水道が通じ、商店もあれば学校や病院、役場や消防署などがある。当たり前のことだけど、その当たり前のことの背景をじっくりと考えてみると、意外な発見に遭遇することがある。

「大学生のとき、道路やダムなどの位置づけを人々の生活の中で考える研究をされている先生に出会ったんです。そして道路ネットワークや施設の位置などがまちの住みやすさとか交通渋滞、都市の経済状況など社会システムのありように深く関わっていることを改めて知らされました」と福山敬教授。道路など様々な構造物や施設の整備が人の営みにどう関係してまちの個性を形づくるのかに強く興味を抱く。

教授が所属する専攻は社会基盤工学。社会の基盤とは?と問われたとき、あなたならどう答えるだろう。真っ先に思いつくのは道路や橋など土木構造物かもしれない。しかし、その構造物の社会的な位置づけや暮らしへの貢献は必ずしも理に適ったものではないかもしれない。このような疑問から経済モデルなど数理的なモデルを考える。

一つ忘れてはならないことがある。それは都市であっても過疎の進む地方の小さい地域も、そこに多様な思いや価値観、考え方を持つ人たちが共生しているという現実だ。「構造物の有りようは、そこにある(住む、また、訪れる)人たちの個々の思いや行動の結果として生まれてくる」との思いから「ゲーム理論に関心をもった」と教授。

ときに驚きと気づきをくれる「ゲーム理論」から。

ゲーム理論は比較的に新しい学問とはいえ、理論体系が示されたのは世界恐慌前夜の90年ほど前になる。

同じ社会に暮らす我々の利害は必ずしもすべて一致しているわけではない。「社会的ジレンマ」とか「囚人のジレンマ」といった言葉を聞いたことがあるだろうか。例えばごみ収集場所はきれいであってほしい、という思いはご近所全員が同じだとしよう。ご近所の日常的な相互協力があれば、そこはきれいに保たれていく。しかし、ゲーム理論が教えてくれるのは、地域住民に相互に通じる効果的なルールがなければ、誰も協力せずにごみ収集場所はどんどん汚れていく可能性があるということだ。

これを他のさまざまな社会システム、例えば道路ネットワークでの渋滞の有りように置き換えても「社会契約や制度設計、相互協力の必要性が問われてくる。それを、合理的な理論に裏打ちされた数式や数値で示すことが必要となることがあります」。  教授の想いの根っこにあるのは社会資本を上手に活かすことで達成される「人々の生活の質の向上」を、どこまでも問い続けていくことのようだ。

「カナダで博士課程を過ごしたとき移民社会にふれて多様な価値観の中での主張と協調の重大さを知りました。日本社会にいると見えにくい“あまえ”に早く気づくためにも、大学在学中に海外留学の経験をしてほしい」。毎年、希望学生を自ら率先してカナダの大学での疑似授業体験へ引率する。「萎縮することなく、どんな問いかけでもいいので先生方にぶつけてみてはどうでしょう。鳥取大学は必ずヒントを返してくれるはずです」。

※平成28年度鳥取大学案内に『スーパーティーチャー』として掲載