鳥取大学工学部 鳥取大学大学院工学研究科 Faculty of Engineering, Tottori University / Graduate School of Engineering, Tottori University

化学・生物応用工学専攻 准教授 伊福伸介

化学バイオ系学科
化学・生物応用工学専攻 准教授

SHINSUKE IFUKU

伊福 伸介

1974年、神奈川県生まれ。

神奈川県立松陽高等学校卒業、東京理科大学理学部化学科卒業。京都大学大学院農学研究科修士課程修了及び博士後期課程研究指導認定。農学博士。同大国際融合創造センター・産学官連携研究員、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学博士研究員などを経て08年、鳥取大学へ。

化学・生物応用工学専攻に所属し、工・農学の領域を超えるリラティブな研究成果が注目されている。

生物由来のキチンナノファイバーに驚きと未来の広がりを観る。

「地の利」と過去の研究蓄積を鳥取で活かす。

博士研究員のころ、同僚たちとともに木材のセルロースによるナノファイバー(超極細繊維)を研究していた。その経験をもとに7年前、鳥取大学に着任後は、カニの殻の主要成分である「キチン」(アセチルグルコサミンが連なった直鎖構造の多糖類)を粉砕して製造したナノファイバーの有効・有用性を探求しているのが伊福伸介准教授だ。

キチンを研究素材とするのに鳥取は“地の利”がある。鳥取は特産の松葉ガニ(ズワイガニ)やベニズワイガニなどカニの水揚げ量が日本有数でカニ殻が大量に得られる。これを背景に鳥取大学では40年以上にわたるキチン研究の蓄積もあった。

「キチンはカニ殻だけではなくエビや昆虫の外皮、菌類の細胞壁にも含まれていますが、これらはセルロースに次いで地球上で合成される豊富なバイオマス資源なのです。カニ殻からキチン・ナノファイバー(キチンNF)を、うまく取り出せれば新しい展開が見えてくるのではないか」と考えたという。キチンは溶剤に溶けにくい性質があり材料として加工利用しにくい。そこで独自に解繊処理を施してキチンNFの分散液を作製。このファイバーを使うと、工業分野のみならず生体、化学、農学分野など多くの領域で驚くべき有効性が次々と明らかになり、生物由来のナノファイバーの世界に新しい一石を投じようとしている。

“ものづくり”にとどまらない意外な研究展開に発展。

「たとえばキチンNFを脱水し樹脂を浸み込ませると、とても強度の高い透明フィルムになります。熱膨張も大幅に抑えられます」と准教授。それはまるで、ぐにゃぐにゃと曲げることのできる「薄い強化ガラス」を想像させる。ウエアラブルな端末機器への応用などが期待される。加工性が高く、透明で柔らかくて衝撃や熱で壊れたり変形しにくい材料……補強繊維としてキチンNFを他の材料と組み合わせて加工することによって、今までにない“夢の材料”が出現するかもしれない。

また見逃せないのが生体応用への優れた活用性だ。動物の損傷した皮膚が急速に回復する効果のほか、腸内環境の改善、ダイエット効果、植物の病害菌の抗菌性や免疫機能の活性化が確認されている。このような反応について准教授は「キチンが何らかのかたちで生体の受容体に働きかける特別な機能をもっているのではないか」と推察している。

工学研究科に所属しているので「ものづくりに資する研究といえばそうかもしれませんが、それがまさかキチンNFを扱いながら医学や農学などにも関連して多くの成果が得られたことは意外だった」。他学部との連携や多分野の民間企業との共同研究実績を積み上げながら、准教授の研究は文部科学省の大学発新産業創出拠点プロジェクト(START:平成25年度、プロジェクト支援型)に採択された。

「生物は、人が真似のできないような美しいものをたくさんつくっています」と言う准教授は、「専門を進めれば基礎の大切さが身にしみてくるし、その基礎がまた専門を広げてくれる。とにかく基礎を大事に切磋琢磨の気持ちをもって学んでほしい」と話す。

※平成27年度鳥取大学案内に『スーパーティーチャー』として掲載