鳥取大学工学部 鳥取大学大学院工学研究科 Faculty of Engineering, Tottori University / Graduate School of Engineering, Tottori University

機械宇宙工学専攻 教授 石井晃

機械物理系学科
機械宇宙工学専攻 教授

AKIRA ISHII

石井 晃

1957年東京都生まれ。

早稲田大学高等学院卒業、早稲田大学大学院理工学研究科物理学及応用物理学専攻博士後期課程修了。理学博士。英国ロンドン大学研究員などを経て88年、鳥取大学へ。

科学技術振興機構・RISTEX(社会技術研究開発センター)分担研究者。「数式に表される理論物理には個性が出る」と言う。学生の個性を応用力へと導くきっかけづくりを物理学から発信している。

物理学の基礎から“AKB48総選挙”予想まで。

ソーシャルメディア(SNS)とヒット予想の相関関係。

物理学に馴染んでいくと、どうやら、ひょんなことから意外な発想が浮かんで興味深い方程式が編み出されるらしい。たとえば石井晃教授は次のような「ヒット現象の数理モデル」を世に送り出した。

なんだか難しいこの数理モデルは、先生の高校時代からの友人で「チャゲ&飛鳥」や「おニャン子クラブ」「チェッカーズ」などのヒット曲を手がけた元音楽プロデューサーとの対話が発端となって生まれたという。妙なことだ。音楽のヒット曲と物理がどうかかわるというのだろう。このモデルはその後、映画のヒット現象予測・解析やアイドルグループ「AKB48」の総選挙予想などに適応して試みられ、その精度の高さが注目されるようになった。これはまるで経済・社会学関係の動きを論理で示す指標のようだ。

教授は言う。「きっかけはブログなどソーシャル・ネットワークの進展なんですね。アメリカ合衆国では10年くらい前から大統領選挙などでブログへの投稿数を見て結果を予測するという動きがすでにありました」。そうしたソーシャルメディア上に無数に存在するビッグデータとその解析はいまや、マーケティングなどさまざまな分野に急速に利活用されるようになっている。とはいえ、これらのビッグデータから得られることが多くあっても、それだけではとどまらないその先がある。

(注)=ヒット現象の数理モデル:左辺は人々の「購買意欲」。右辺は第1項から順に「減衰効果」「宣伝・報道効果」「直接コミュニケーション(口コミ)効果」「間接コミュニケーション効果」をSNSなどのデータを基に数理化したもの。

物質の力学を見るためだけに扱うのではない物理学の本質。

教授の専門は物性物理。もの(物質)の性質、とくに物質の表面での反応作用を原子・分子レベルにまで物理の理論を基に解き明かす研究に取り組んできた。ガリウム・ナイトライドの性質や半導体、触媒反応の理論的解析もそのうちの一つ。そのような教授が、たとえば「AKB48総選挙」予想という意外な試案を着想する。それが物理?という疑問が起こるにしても、そこが、おもしろい。

「実はこのヒット現象の数理モデルは化学反応のレート方程式という式の応用なんですね。いろいろな方程式がありますが、学生には、なぜそれぞれの式があるのかを深く考えてみてほしい。式の丸暗記じゃ駄目なんです」と言う教授には、ヒット予測のためだけに、その式が生まれることを正解としていない。「どこか浮世離れしているように思われがちな物理ですが、物理で取り扱う対象は決まっていない(逆に言えば無限に広がっている)と思っています。物理は、ものごとを考えていくための方法論の塊みたいなもの」という。その塊からさまざまな力を吸収して社会のフロンティアになってほしいと教授は思っている。

※平成27年度鳥取大学案内に『スーパーティーチャー』として掲載