鳥取大学工学部 鳥取大学大学院工学研究科 Faculty of Engineering, Tottori University / Graduate School of Engineering, Tottori University

化学・生物応用工学専攻 教授 河田康志

化学バイオ系学科
化学・生物応用工学専攻 教授

YASUSHI KAWATA

河田 康志

1957年、岡山県生まれ。

理学博士。岡山大学理学部化学科卒、大阪大学大学院理学研究科博士課程(有機化学専攻)を修了後、京都大学助手、博士研究員として米国アイオワ州立大学研究員などを経て92年、鳥取大学へ。

95年英国オックスフォード大学訪問教授。00年工学部・生物応用工学科教授、03年より大学院医学系研究科機能再生医科学専攻担当。08年より大阪大学蛋白質研究所研究員(構造形成部門)、13年よりフェロー(客員教授)。鳥取大学大学院工学研究科・研究科長。

生命を形づくるタンパク質の謎に迫る。それは、未来の“いのち”につながっている。

天文学的な広大なテーマが降りそそいでいる、今のタンパク質化学。

今や世界一の長寿国となった日本で、高齢化が進むにつれて、さまざまな問題が起こっている。その一つがアルツハイマー病やパーキンソン病など脳神経変性病の増加だ。これらの病気にともなう認知能力や身体運動機能の低下は、医療や介護分野のみならず大きな社会問題となっている。河田康志教授は、このような病気の発生(症)原因やメカニズムをタンパク質・酵素の構造や機能の解明を通じて読み解こうと研究している。

専攻は「化学・生物応用工学」。わかりづらいかもしれない。そこで教授は語る。

「生物を形づくる細胞は、化学の素反応から成り立っています。つまりケミストリー(化学)をベースにした反応の複雑な集合体が生命だと考えてもらえばわかりやすい。だから化学と生物、あるいは物理や数学なども、生命の観点からするとすべて連なり合っているのです」

そうした視野をもった上で、さて、タンパク質や酵素(酵素もタンパク質の一種)の存在を考えていく。タンパク質は人体では水の次に多い細胞の構成物で、幾種ものアミノ酸が、さまざまに結びついて(約100~1,000個が結合)形づくられている。「ですからアミノ酸の結合のあり方が少し変わっただけで、天文学的数字になるほど多様なタンパク質が形成されます」と教授。私たちの体の中では、日々、無数のタンパク質が合成され、それが“いのち”を止むことなく育んでいることになる。

DNAに支配されないタンパク質の存在から光明を見出す挑戦の始まり。

脳神経変性病の発症原因には、特殊なタンパク質(Aβペプチドやαシヌクレイン)の形の変化が深く関連しているという。それが脳細胞の内外で溶解(分解)しにくいアミロイド線維と呼ばれる凝集体をつくり、その過程で毒性が生じると見られている。

「細胞の核にあるDNAはタンパク質の形成を第一義的にはコード(伝達指令)していますが、ではタンパク質の形成過程がDNAに完全に支配されているかというと、実はそうではないことがわかってきました」となると、タンパク質形成に別の因子が関係しているということだ。そこで教授たちが注目している一つに生体超分子「分子シャペロン」というタンパク質分子とその働きがある。

タンパク質は一定の「かたち」を保ってこそ、正常に機能するけれども、さまざまの内的・外的要因(環境変化など)によって、その本来あるべき正常な「かたち」が壊れやすくなる。しかし細胞内には、その壊れを修復・再生する働きも備わっており、この役割を担っている一つが分子シャペロンだと考えられている。その機能の解析から神経変性病などの予防・治療につながる手がかりが見つかるものと期待されている。

工学とは言いながら、教授の研究は医学系研究科にも属しており、広大な研究領域にまたがる。「無関心、無感動な学生生活は送ってほしくない。大学受験が終わったら、また気持ちをリセットして敏感な感性と能力に磨きをかけてほしい。ことに研究室は初期の学部での学びとは違います」と河田教授は学生の成長に期待を寄せている。

※平成25年度鳥取大学案内に『スーパーティーチャー』として掲載