鳥取大学工学部 鳥取大学大学院工学研究科 Faculty of Engineering, Tottori University / Graduate School of Engineering, Tottori University

機械宇宙工学専攻 教授 川添博光

機械物理系学科
機械宇宙工学専攻 教授

HIROMITSU KAWAZOE

川添 博光

1954年、三重県生まれ。

工学博士。名古屋大学大学院工学研究科(航空工学専攻)を修了後、豊田中央研究所研究員、名古屋大学助教授(航空宇宙工学専攻および理工科学総合研究センター)などを経て96年、鳥取大学工学部助教授に。

日本航空宇宙学会、AIAA(アメリカ航空宇宙学会)などに所属。Arch T.Colwell Merit Award,(Society of Automotive Engineers論文賞)=米国、96年=受賞。「ちょっとした弾みで研究はがらりと変わる」と、学生に期待する。

「飛ぶ」ということが好き。飛行体と、それを包むものに迫る。

スペースシャトルは“流体”だ。

乗りもの好き。とくに飛行機。「飛ぶ、っていうのが大好きですね」。書棚には、いくつかの飛行機とF1マシンの模型が置かれていた。それを手に取って「流体」について熱く語る。見ているのは機体そのものだけではなく、機体をかすめ過ぎていく空気であったり分子や熱、圧力だったりする。機体とそのまわりの流れには不思議な力作用や現象が隠されている、というのが川添教授の研究テーマ「流体力学」だ。

もともとは航空宇宙工学から始めた専門領域。スペースシャトルが国際宇宙ステーションに日本の実験棟「きぼう」を運んだ。シャトルは、どのような流体のなかを飛行してきたのだろう。宇宙からシャトルが地球に還ってくるときのスピードは、およそマッハ数で20〜30。この速度で真空状態から、分子がパラパラとした薄い気体、さらに密度の濃い気体空間(大気圏)へと飛んでくると「熱が問題になってくる。機体が1万Kとかの高熱にさらされプラズマ状態に置かれます。そうなると電波での交信もできない。いわゆる“ブラックアウト”です」。この状態を再現するため鳥取大学で自作の「アークプラズマ風洞」という実験装置を作った。ねらいは大きく2つ。材料の開発と非平衡で複雑な流れの解明。

流れ行くものから自分を照らす。

シャトルほどのスピードではないが、超音速航空機がある。かつて「コンコルド」という旅客機が飛んでいた。大気圏内を超音速のスピードで飛ぶと、パーンという音が発生する衝撃波が出る。この衝撃波は圧力が高いので、それを利用して揚力や方向制御に使う「ウエーブライダー」の研究も進め、「衝撃風洞」の実験装置も製作した。さらに風洞の中で、想定する飛行物体(移動体)を3Dに自在に動かして空力特性を測る実験もしている。

シャトルの翼は、民間旅客機のように左右に大きく突き出した形状をしない3角形構造のデルタ翼になっている。新幹線の尖頭が、なぜあのような形状をしているのか。「まさしく機能美ですね。それは目的によって変わってくる」と教授。けれど教授は、別の見方もしている。「モチベーションというのは本来、人それぞれがもっている個々のもの。でなければ目的に左右されるもの。私自身のことで言えば“これが好きなんです”という思いが研究につながっている」と。

暇があれば哲学をはじめ様々な本を読む。「たとえば、私がハーッと一息して死んだとします。息の分子は地球全体に拡散していく。その分子一つひとつの流れをいろいろなものに例えて考えてみたらどうだろう」。流体、すなわち流れ行くものについて教授は常々「自分の身に照らして考えてみてほしい」と繰り返し、「フィジビリティー(可能性の)スタディーを世に問うこと」を学生たちと模索している。「もし私が無人島へ行くとして、カメラを1台持っていけるとしたら、たぶんマニュアル式のカメラを持って行く。授業を通じて自分の経験してきたことを少しでも出せればいいと思っています」。

※平成21年度鳥取大学案内に『スーパーティーチャー』として掲載