鳥取大学工学部 鳥取大学大学院工学研究科 Faculty of Engineering, Tottori University / Graduate School of Engineering, Tottori University

社会基盤工学専攻 教授 松原雄平

社会システム土木系学科
社会基盤工学専攻 教授
工学部附属地域安全工学センター長

YUHEI MATSUBARA

松原 雄平

1951年、大分県生まれ。

工学博士。鳥取大学大学院工学研究科・土木工学専攻修士課程修了。のち同大学助手、助教授を経て教授に。専門は海岸工学ならびに水産工学。92〜93年、韓国釜山水産大学校(現・釜慶大学校)客員教授。以来、鳥取県と連携をとりつつ日韓での海岸工学、水産工学に関する共同研究、セミナー開催を手がける。

最近は、東日本大震災に関して、被災地での調査や津波予測などの地域防災に関わる業務に携わっている。12年4月、工学部に地域安全工学センターを設置し、その初代センター長を務める。12年9月、防災功労者防災担当大臣表彰受賞。

波をコントロールする海岸工学から一歩抜け出す。生態系、水産資源、景観にまで目配りした工学モデルを探究。

「サンド・リサイクル」でソフトな海岸保全を実践。

鳥取の観光名所になっている鳥取砂丘を見てきた。砂の岸辺が打ち寄せる波に洗われ、どんどん削られていた。日本各地の海岸で美しい景観を形づくり、海と人とのふれあいの場にもなってきた砂丘が危うい。のみならずその砂が移動し、近くの港に堆積して船の出入りを妨げるということも心配されている。

「侵食が進んでいますね」という松原雄平教授の専門は海岸工学。海岸地形の変化を現地観測と数値シミュレーション、水理実験などによって解析し、海岸保全や港の埋没対策工法などを研究している。

「これまでは(コンクリートの防波提や離岸提などの)構造物で海岸の侵食を防ぐのが一般的な考えでした。そうするしか方法がないケースはもちろんありますが、しかし構造物の設置によって美しい景観を損ねたり、マイナスの地形変化を引き起こすスパイラルもあるんです」。そこで教授は数年前から、新しい方法として「サンド・リサイクル」という試みに挑んでいる。河川から流れ込む砂や沿岸の漂砂の動態を把握して、移動した砂を侵食された部分に戻そうというのだ。この「砂で海岸を守る」発想は、自然の大きな力に沿って工学技術を発展させる意味で、海の波をコントロールすることに主眼を置いてきた従来の海岸保全の考え方に一石を投じている。

環境に配慮した整備手法につなげる評価モデルの確立へ。

生態系への配慮や景観保全の観点から、アメリカなどでは既設の構造物を撤去する取り組みさえあるという。利便性を追求するあまりにおろそかにされてきた環境アセスメントは、今後ますます重要となっていくのだろう。海岸工学も例外ではない。

その点、教授の研究は、沿岸域での環境や土木構造物の景観を評価する手法の確立、魚礁による増殖型の水産資源開発など幅広いテーマに目が向けられている。

とくに沿岸域の環境評価手法では、AI(人工知能)を活用して沿岸域の水質と生物の関係を定量的に評価するシステムの開発を進めている。また景観評価では、感性工学を用いて人間の審美観を分析し、地域住民が参加するかたちでの新しい施設整備手法を探っている。

このような研究で教授が大切にしているのは「現場にしっかりと立会い、現実を実際に見ること」という。地形を測ったり、船で流れを観測するなどフィールドワークは欠かせない。その舞台を地元の鳥取の海岸や海に求め、現実に進行している課題を行政や地域住民と一緒になって解決しようとする取り組みの成果が期待されている。

海岸線が、長い年月を経て少しずつ変化している。波は絶え間なく打ち寄せては引いている。「地域の海岸から学び、地域の海岸を見守っているんです」という教授。山陰の海岸から日本海を望みつつ、将来的には環日本海という観点から、国境を超えて東北アジアの人と海とのより良い関係のあり方を提言したいと思っている。

※平成22年度鳥取大学案内に『スーパーティーチャー』として掲載