鳥取大学工学部 鳥取大学大学院工学研究科 Faculty of Engineering, Tottori University / Graduate School of Engineering, Tottori University

化学・生物応用工学専攻 准教授 野上 敏材

大学院工学研究科
化学・生物応用工学専攻 准教授

TOSHIKI NOKAMI

野上 敏材

1976年、和歌山県生まれ(岡山育ち)。

博士(工学)。99年、京都大学工学部工業化学科卒。同大大学院工学研究科・博士後期課程修了。スイス連邦工科大学チューリヒ校で博士研究員、京都大学大学院工学研究科講師(合成・生物化学専攻)などを経て12年、鳥取大学(化学・生物応用工学専攻)へ。

「化学に対しては厳しく、人には優しく」が理想。「人の役に立つ化学の難しさ」ゆえに、さらに化学を極めたい。

Live your own Life. 「化学」を通じて自分らしく。

もっとロマンのある科学の「化学」へ。

“化学”の成果物は実に多様で私たちの生活の隅々まで、ぎっしりと溶け込んでいる。「医薬品や工業用の新素材開発まで、いろいろな研究が実用化されていますから、この分野の出口はすごく広い」と野上敏材准教授。工業立国を目指し、それを実現させた背景にも先人たちの化学への取り組みが“縁の下の力持ち”のように現在の社会には広がっている。「化学は数ある学問分野のなかでも、日本でこそ学ぶ価値のある分野の一つだと思っています。ですから、地方大学でも世界におけるレベルは十分に高いと思います」。

ただ、化学はバラ色の世界でないことも知っておく必要がある。おかしいな…こんなに人の役に立っている学問なのにマイナスイメージもつきまとう、と。学生時代に地下鉄サリン事件があり、その前には高度経済成長期に各地で公害が起こって社会問題になった。負の遺産もある。が、誇るべき面も多い。両面を絶えず意識しながら「化学は実学の先に、もっと夢(ロマン)を語りかける学問でなければならない」とも思っている。

そんな自分も高校生のときには物理を志向していた。「このレベルで難しいと感じる自分では、とうていやって行けない」と思い、父と同じ化学者の道へ。ところが、いざ研究となると「化学も甘い世界じゃなかった」と苦笑する。

「糖鎖」の人工的な構築:その自動合成に一歩、二歩と近づく。

研究テーマは、もともと学生時代から目を向けていた「有機化学」を基盤とする「糖質化学」や「電気化学」。電池材料になるイオン液体や蓄電池の活物質の研究などとも並行している。

「たとえば、樹木は地面に根を張って何十メートルも直立する構造体を自分でつくっています。それを形づくる要素にはセルロースがありますが、これは有機分子である糖がつながった結果なんです」。一方で鳥取県特産の松葉ガニを例に「食べた後のカニ殻は肥料として有用ですが、これは土壌中の菌が酵素を用いて甲羅などに含まれるキチンを分解する結果なのです」。つまり、自然界では糖鎖やそれに類する有機分子の構築と分解そして再構築が絶えず営まれているということだ。そこに化学は分子レベルでメスを入れて理解を深め、模倣しようとする。

セルロースやキチンなど、生体をかたち作っているさまざまな糖鎖を自在に構築するツールを提供できないかと思った。そのための自動合成装置を開発し、学生と試行錯誤しながら日々研究している。

高校・大学生時代にはサッカーをしていた。それなりに努力はしたが、自分の限界にも向き合った。「スポーツする人って真剣だし、その人の能力や努力が正直に現れますよね。そんなフェアなところがスポーツの魅力です」。

えっ? 化学もそうなの? 「長い人生で考えれば大学で学ぶ時間は短いものです。自分らしく、そして面白いと思えるまで学んでほしい」という。

※平成29年度鳥取大学案内に『スーパーティーチャー』として掲載