鳥取大学工学部 鳥取大学大学院工学研究科 Faculty of Engineering, Tottori University / Graduate School of Engineering, Tottori University

情報エレクトロニクス専攻 教授 菅原一孔

電気情報系学科
情報エレクトロニクス専攻 教授

KAZUNORI SUGAHARA

菅原 一孔

1956年、神戸市生まれ。

工学博士。山梨大学工学部電気工学科を卒業後、東京工業大学大学院理工学研究科・電子物理工学専攻修士課程を修了。神戸市立工業高等専門学校・電子工学科助教授を経て94年、鳥取大学工学部電気電子工学科助教授。02年より知能情報工学科教授。専門分野は計算機工学、マルチメディア信号処理、電気電子回路論。電子情報通信学会の回路とシステム研究専門委員会委員、評議員、またIEEE広島支部理事などを歴任。

06年、鳥取市に路線バス等の公共2次交通経路探索システムを管理運営する日本トリップ有限責任事業組合(LLP)を立ち上げ専務理事に就任。

小さなチップに無限の可能性を秘めた回路を構築する。

マルチメディアが、どこまで進歩するのか。その先端に立ち会ってみたい。

知能情報工学科は計算機工学、知能制御工学、知識工学の3つの大講座で構成され、先生が所属するのは計算機工学講座。研究室は①マルチメディアに関する信号処理を行うためのアルゴリズムの、ハードウエア実現。②モバイル・エージェント技術による分散システムの構築など、3つのテーマを柱にしている。

小さいころから身近にあった機器いじりが好きで進路選択にあたり、勉強する方向を機械にするか電気にしようかと考えていた。結局、見えない電子への好奇心が拍車をかけ電気の分野に進んだ。「回路系は好きでしたね。高専時代には自分でプリント基板を組んだり、真空管を使ったオーディオのアンプを作って遊んでいました」と懐かしむ。どちらかといえば電気電子分野、つまりハードが専門。しかし「ハードがあってもソフトがなければ……」。今の自分を位置づけると「軸足をハードに置きながらもソフトとの中間地点ぐらいにあるのかな」と思っている。

研究はというと、①は主に映像信号を処理してアプリケーションに応用適応させようというものだ。この場合、パソコンだと信号をCPUがメモリ上のプログラムを実行しながら処理するが、それをFPGA(ICチップの一種)だけで処理する回路を設計しようとしている。たとえば言語音声を発する人の唇の動きを映像処理して言葉として認識できるなら、周囲の雑音に影響されない音声認識が可能。それをパソコンを介せずカメラや録音・録画像機器そのものに組み込んだハードウエアは構築できないものか。「FPGAでCPUもカスタムでつくることが可能です。LSI(集積回路)はもともと一律的な設計によって大量生産・実用化されたが、これからは少量・多品種のカスタム時代になるかもしれない。ただ情報処理の速度が遅いのが課題」という。その課題がクリアされたとき、もしかすると手持ちのビデオカメラや携帯電話が、さまざまな自動認識マシンに変貌するかもしれない。

モバイル時代のITと未来のネット社会を見通したエージェント・フレームワークの創出に向けて。

ネット社会では個々のパソコンでのやり取りは「サーバー〜クライアント」という関係にある。これを「サーバー〜サーバー」と同時に「クライアント〜クライアント」の関係を交互に結びつけたらどうなるのだろう、というのが研究の②。モバイル・エージェントシステムはこのようなプログラムそのものも個々のデータも同時に情報ネットワークで移動する事を想定している。だが「この技術は、まだ実際には応用されていないのではないか」と見る。パソコンに電源を入れると同時にパソコンがもっている機能(アプリケーション)と情報そのものがネット上を自由に移動(分散と集積)するようなネット社会が構築された先には、どんな情報社会が待っているのか。プライバシー情報を守りながらシステムを安定・発展させるために何が求められているのか。

「モバイル・エージェントの集まりとしてシステムを構成すれば、コンピューターウイルスへの耐性を高められるのではないか。病気の細胞を切り離すように、ウイルスに感染したモバイル・エージェントだけを切り離すことで、システム全体の健康を守れないだろうか。だから新しいエージェント・フレームワークを構築したい」その研究成果は、今までにない有用な電子機器の創造や、あるいはコンピューター・ウイルス対策に有効なシステムの手がかりを発見することにつながるかもしれないのだ。

手のひらに乗る小さいチップ(回路)のなかに無限の可能性を探る研究室。学生に対しては、一人の人間として「目標が変化していっても構わないが、いつまでに何を達成するか、時間軸を意識して日々の活動をすること」と「人とのコミュニケーション能力を磨くこと」を念頭に向き合っている。

※平成20年度鳥取大学案内に『スーパーティーチャー』として掲載