鳥取大学工学部 鳥取大学大学院工学研究科/工学専攻 Faculty and Graduate School / Department of Engineering Tottori University

機械物理系学科 教授 松岡広成

松岡 広成

機械物理系学科 教授

MATSUOKA HIROSHIGE

松岡 広成

1968年、香川県生まれ。

博士(工学)。香川県立丸亀高等学校卒。東京大学工学部機械工学科卒後、同大学大学院工学系研究科博士課程修了(産業機械工学専攻)。のち出光興産㈱に入社し化学の研究分野に接する。99年、鳥取大学工学部応用数理工学科講師、2017年より工学部機械物理系学科教授。主な研究テーマは分子レベルでの流体潤滑膜で特に液体に注目。

趣味は工学とはかけ離れた植物(とくに和蘭)の栽培。

触れるの? 触れないの?
超微小世界で起こっている不思議な物体間の動きと働き。

時計の中の「トライボロジー」。

私たちの身の回りにある機器類はマイクロ/ナノメーターといった原子・分子レベルの超微小領域での研究成果を糧にして進歩し続けている。いったい、どこまで進んでいくのか。その中で松岡広成 教授は「トライボロジー」の分野を中心に研究している。

でも、トライボロジーって何だろう?

これは「摩擦」とか「摩耗」、「潤滑」という意味を含んだ学術用語の一つ。例えば、古い柱時計の中を見ると部品の歯車が錆びていた、としよう。そこで錆を取り除いて歯車が動きやすいように油(潤滑剤)をちょっぴり注入する。すると歯車は調子よく回転しはじめたが、かみ合う歯車同士には常に摩擦がおこり、少しずつ歯の部分は摩耗していく宿命をもつ。歯車が摩耗し切ったら、時計は正確な時間を刻めなくなる……。これが時計の中で起こっているトライボロジーである。さて、時計ではなく今度はパソコン(PC)の中にあるハードディスクの中心部をのぞいてみるとしよう。

分子レベルでの物体間作用を理論解析する。

歯車と歯車がかみ合っているように「物体間には相互作用が働いています。それは固体ばかりではなく液体や気体も関係して相互に影響し合っています」と教授。

そこでPCのハードディスク装置を見てみると、記録媒体であるディスクと、そのデータを読み書きするヘッドスライダの隙間は、今や1〜2nm(ナノメートル)にまでなっている。1nmは100万分の1ミリなので、見た目にはほとんどくっついているとしか思えないのだけれど、実は「ディスクとヘッドスライダは微小に離れていて、くっついてはいない。その隙間には分子レベルでさまざまな動き(表面間力※)が起こっています。その作用の謎もまた多い」。だから、それを理論解析し、実験で得られた数値を検証していく。ハードディスクの高機能化に向けた研究の一端だ。

大学院修了後、化学メーカーに就職したが「そのときに得られた化学の知識も大きな糧になっている」という教授。だれも知らない微小世界での物体の性質や働きの関係を機械工学の観点から探究している。

※表面間力
物と物とが極度に近づいたり接したりすると、物体同士が分子レベルで互いに作用を起こす。コップに注いだ水があふれ出しそうになったときに見られる表面張力もその一つ。物と物は、接していなくても極度に近づいていくと相互に反応し合って力がすでに働いている。

※令和2年度鳥取大学案内に『スーパーティーチャー』として掲載