化学バイオコース 教授 吾郷 万里子

化学バイオ系学科/化学バイオコース 教授
AGO MARIKO
吾郷 万里子
島根県出雲市生まれ。
島根県立出雲高等学校卒。広島大学教育学部教科教育学科理科教育学(化学)卒、同大学大学院理学研究科博士課程前期化学専攻修了。2009年、京都大学大学院農学研究科にて博士(農学)取得。米国・ノースカロライナ州立大学、フィンランド・アアルト大学などでバイオマス研究に精励。明星大学理工学部特任准教授、東京農工大学農学研究員寄附講座准教授を歴任、25年より鳥取大学工学部化学バイオ系学科教授。
趣味の乗馬が何よりの癒し。乗馬後に馬の体を洗いながらコミュニケーションをとる時間も楽しいという。
カーボンニュートラル実現のカギとなれるか。
未利用のバイオマス資源でつくる新しい機能性材料。
廃棄されている木材成分「リグニン」の可能性。
私たち人類が豊かな暮らしを続けていくためには、化石資源に頼りすぎず、環境にできるだけ負荷かけないようにすることが大命題だ。ゆえに世界中で、再生可能エネルギーの導入、ごみの減量や分別、リサイクル推進といった様々な取り組みが行われている。
生物由来の再生可能な資源「バイオマス」の有効活用もその一つ。生ごみや家畜排せつ物、間伐材、稲わら、海草など、バイオマス資源にもいろいろあるが、吾郷万里子教授が注目しているのは木質バイオマス。木材は主に、セルロース、ヘミセルロース、リグニンという3種類の成分で構成されている。セルロースとヘミセルロースは紙や布などの原料として活用されているが、リグニンはほとんど利用されず廃棄されている。教授は、この未利用バイオマスを使った新しい機能性材料の開発に取り組んでいる。
リグニンは、例えばプラスチック製造の代替物質としての活用が期待されているという。プラスチックの原料は原油だが、昨今、海上輸送のリスク、価格高騰といった問題が顕著。また、プラスチックが海や川に流れ出て、環境汚染や生態系への悪影響につながっている。しかし、天然資源から得られる高分子材料であるリグニンが使えれば、このような諸問題を解決できるのだ。
地道な積み重ねと仲間との出会いを糧に。
パルプ産業が盛んで、バイオマス研究が進んでいるアメリカやフィンランドの大学への留学は、世界中からやって来る優秀な研究者との出会いが大きな刺激に。自分とは違うものの見方や考え方、柔軟な発想力、社会実装まで見据えた研究の進め方など、気付かされることがたくさんあった。そして何より、同じ志を持つ“研究仲間”ができたことがうれしかった。リグニンの研究を始めたのも、その必要性について、米国大学の指導教員と意見が一致したことがきっかけだった。
そんな自身の経験から、高校生・大学生に向けて送るのは「これから多くの出会いやチャンスが絶対にある」というメッセージ。大事なのは、その機会を逃さぬよう今できることをきちんとやること。「その努力が必ずつながります。楽しみにしてください」と未来への道しるべを示す。
地球上で最も賦存量が多いバイオマスは木材に含まれるセルロースであり、その次に多いのがリグニンである。「これらが活用できなければ、カーボンニュートラルの社会なんて実現できない」と使命を感じている教授。まだ世の中にない新しい材料を創出したいと走り続けている。
※令和8年9月掲載