社会システム土木コース 教授 桑野 将司

社会システム土木系学科/社会システム土木コース 教授
KUWANO MASASHI
桑野 将司
兵庫県明石市生まれ。
博士(工学)。明石工業高等専門学校都市システム工学科卒。広島大学工学部第四類建設工学課程卒。同大学大学院国際協力研究科開発科学専攻博士課程前期修了後、同大学院工学研究科助教、神戸大学大学院工学研究科助教を経て、2013年鳥取大学大学院工学研究科准教授。19年より現職。
特技は早寝早起きで、超朝型生活を実践。毎日午前4時頃に起床、心穏やかに読書をしたり考え事したり、「日本が一番静かな時間」を楽しむことから一日を始める。
地域のデータで、地域に特化したAIをつくり、これからのまちづくりに役立てたい。
データには、その格差に隠れた死角がある。
今や私たちは、日常生活で当たり前のようにAI(人工知能)を利用している。一日に何度も問いかけ、より良い選択をするための参考にしている。AIには、公開されている様々な分野のテキストや画像をはじめ、過去から最新までのニュース記事、SNSの書き込み内容、Web上の検索履歴、商品の購買履歴など、世界中のありとあらゆるデータが蓄積されており、そこから一般的に正しい答えを導き出してくれるからだ。
どんな問題でも答えを出してくれそうなAIだが、実は「データには死角がある」という。地域社会や企業が抱える課題解決のためにはどのようなデータを集め、どんな分析を行い、その結果をどう整理すべきか、そういった手法や新しい解析方法開発の研究をしている桑野将司教授は、死角の一つとして大都市と地方のデータ量の差を挙げる。
得られるデータ自体が少ない地方は、AIの中では言ってみれば少数派。導き出された課題解決策が大都市にはマッチしても、ローカルの実状と合わないのは当然。多数決のデータでは分からないこと、データ自体がなくて見えていないところがあり、その死角が“ずれ”を生じさせているのだ。
課題解決の答えはAIではなく、人がつくるもの。
そこで桑野教授は、例えば人口最少の鳥取県なら鳥取県の交通や商業、産業、医療など様々なデータを集め、地域の暮らしやまちづくりの課題に寄り添った“オーダーメイドのAI”を作ろうとしている。量による死角は、様々な種類のデータを組み合わせることで補い、データとAIを活用して“誰にとって、どのような影響があるのか”を見える化し、より良い意思決定ができるようサポートしている。「地方には、AIもまだ気付いていない問いが山ほど眠っている。それに向き合い、その地域に合った答えをつくりたい」と熱く語る。
地域に根差したAIによって分析結果が出たとしても、対象とするのは高齢者なのか子どもなのか、住民のためか観光客のためか、その立場や見方によって求める答えは違うので、正解は1つではない。「だからこそ、単なる多数決ではなく、いろんな角度で検証しながら皆でディスカッションすることが大事。データやAIが示す結果はそのための指標であり、選択肢の一つにすぎない。最後に判断を下すのは、AIではなく人間」ということを強調する。「大切なのは“答えを探す“ことではなく、“人と一緒に答えをつくる”こと。それこそ私の研究」、穏やかながら揺るぎない信念が垣間見えた。
※令和8年9月掲載