鳥取大学工学部 鳥取大学大学院工学研究科/工学専攻 Faculty and Graduate School / Department of Engineering Tottori University

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機械宇宙工学コース 教授 田村 篤敬

田村 篤敬

機械物理系学科/機械宇宙工学コース 教授

TAMURA ATSUTAKA

田村 篤敬

1973年、群馬県中之条町生まれ。

博士(工学)。名古屋大学工学部航空学科卒業、同大大学院工学研究科博士前期課程航空宇宙工学専攻修了。1998年、株式会社豊田中央研究所に入社、主に交通外傷関連のバイオメカニクス研究に従事。米国2大学で先進的な研究にも携わる。名古屋工業大学の共同研究員を経て、2013年より鳥取大学大学院工学研究科機械宇宙工学専攻准教授。21年、同教授。

学生時代は柔道に打ち込む。高校時代の部旗の言葉「盡己」(“己を尽くす”の意)は、戦う場所が畳の上からラボに変わった今でも常に心の中にある。

目には見えない生体内組織の動きを捉え、交通事故やスポーツで受ける外傷のメカニズムを探る。

痛みと難治の原因とは? むち打ち症の謎に迫る。

骨折や打撲、頸椎捻挫、裂傷・擦過傷など、交通事故やコンタクトスポーツで負う怪我には様々なものがある。このような傷を負うとき、私たちの身体のどの部分に、どれくらいの力がどんなふうに加わり、どのような影響を及ぼしているのだろうか。そういった受傷のメカニズムを明らかにし、予防や対策へとつなげていくのが「外傷バイオメカニクス」の分野だ。田村篤敬教授は、機械工学を基盤に、傷害予測シミュレーション、生体モデリング、筋骨格モデリングの開発、生体材料の特性評価において独自のアプローチで研究を進めている。

特に注力しているのは、脳や脊髄といった中枢神経系の組織が受けるダメージ。例えば「むち打ち症」は、激しい衝突・転倒により首がムチのように大きくしなることでめまいや頭痛、首・背中の痛み、手足のしびれといった諸症状が現れる頸部外傷だが、実ははっきりとした原因や症状が長引く理由は分かっていない。そこで教授は、身体の中の軟らかい組織が受けるダメージに着目し、脳組織のほか、脊髄の灰白質や白質、脊髄を包んでいる髄膜、脊髄から伸びている神経根など脳脊髄周辺にある生体材料の力学特性を計測。得られたデータを数値モデルに反映して、受傷時の状況を徐々に解き明かしている。

“知りたい”気持ちは、何にも勝るエネルギー。

軟らかい生体材料の力学実験には当初から、高い壁が立ちはだかった。取り扱いには金属のように硬い材料の計測とはまた別の、技術的な難しさがある上、交通事故やスポーツにおける受傷状況を考えると高速・大変形という条件での精密なデータが必要とされる。しかし、そういう高度な要求を満たす試験装置がなかったのだ。それならば自分で作ってしまおうと、田村教授は生体材料用の単軸引張試験や二軸引張試験、押込試験ができるオリジナルの実験装置を次々と開発。これらの実験装置は今や研究の要となっている。

「生体組織の不思議に魅せられている」という田村教授。1つ謎が解けてもまた次の謎が湧いてくるから、興味は尽きない。しかし意外にも、大学4年生まではあまり研究熱心ではなかったという。将来に迷い、自分はどこでどう生きていくべきか、と思い悩んでいたからだ。自己を見つめ直し、考えに考えた末にたどり着いたのが学術研究の道だった。「それが自分の一番の強みではないか」。目標が定まってからは勉強にも研究にも真剣に取り組むようになった。

その姿勢は今も変わらない。「自分自身が“面白い”“知りたい”と思うことをやるほうが、エネルギーが出る。関心の赴くままに、行けるところまで行きたい」と真っ直ぐに前を見つめている。

※令和8年9月掲載